パーソナルジムの稼働率、「満席の日」と「ガラ空きの日」の差が激しい問題 —— 空き枠を可視化して月売上を底上げした方法

「今月、売上が下がった気がする。」
月末に数字を見て、そう感じることがある。でも予約自体は入っている。キャンセルが増えたわけでもない。なのに売上が伸びない——そういうとき、原因はだいたい「稼働率の偏り」にある。
FIREFITNESSを運営して3年目に入った頃、僕はこの問題にようやく向き合うことになった。
「満席」の裏側で、大量の空き枠が眠っている
パーソナルジムの予約には、はっきりとした波がある。
仕事帰りの18時〜21時は争奪戦。月曜と金曜の夜は「空きが出たら教えてください」と言われるくらいの人気枠だった。一方で、火曜の午前中や水曜の14時〜16時はほぼ毎週ガラ空き。ブースが2つあるのに、2つとも空いている時間帯が1日に2〜3コマあった。
冷静に計算してみると、こうなる。
1日の営業時間: 10時〜21時(11時間 × 2ブース = 1日22枠) 週間の総枠数: 22枠 × 6日 = 132枠 実際の予約枠: 平均75〜80枠
稼働率: 約57〜60%
つまり、週に50枠以上が「誰にも使われずに過ぎている」。1枠あたりの平均単価が約6,500円だとすると、週あたり32万円以上の機会損失が理論上は存在していた。
もちろん、全枠を埋めるのは現実的ではない。だが「埋められるのに埋まっていない枠」が確実にあった。それが見えていなかった。
感覚で分かっていても、行動が変わらない理由
「水曜の昼は空いているな」くらいのことは、体感で分かっていた。
でもそれだけだと、何も変わらない。理由はシンプルで、「どの曜日・時間帯が、どの程度空いているか」を数字で把握していなかったからだ。
- 「なんとなく火曜の午前は暇」→ でも実際に何枠空いているかは不明
- 「金曜の夜は混んでいる」→ でも予約を断った件数は記録していない
- 「もう少し分散できたらいいのに」→ でもどの顧客にどの枠を提案すべきか分からない
感覚だけで経営していると、この「なんとなく」が永遠に続く。数字がないから施策を打てず、施策を打たないから状況が変わらない。
個人店舗のオーナートレーナーは、広告にかけられる予算が少ない。だからこそ、既存顧客のセッション頻度と枠の使い方を最適化する方が、新規集客より即効性がある。なのに、僕自身がそこに手を付けていなかった。
数値管理に時間を取られると、本業が犠牲になるジレンマ
ここにもう一つの問題がある。
セッション数が少しずつ増えてきたタイミングで、数値管理の必要性は感じていた。でも、管理に時間を割くほど、既存の顧客対応にかけられる時間が減る。
パーソナルジムの経営は「リピート率がすべて」と言っても過言ではない。顧客一人ひとりのコンディションを把握し、セッションの質を維持し、適切なタイミングで次の予約を取る。これを怠ると、顧客満足度が下がり、リピート率の低下につながる。
実際に僕がそうだった。Excelに予約データを手入力して、曜日別・時間帯別の稼働率を集計しようとしたことがある。半日かかって途中で挫折した。その半日は、セッション後のフォローアップLINEを送る時間も、メニュー組み立てを考える時間も失われた。
数値管理をしないと改善できない。でも数値管理に時間をかけると、リピート率が下がって売上が減る。
この矛盾を感じているジムオーナーは、僕だけではないと思う。
空き枠の「見える化」で何が変わったか
FITBOOKERを自社ジムに導入して一番変わったのは、この「見えない稼働率」が勝手に可視化されるようになったことだ。
分析ダッシュボードを開くと、こういうデータがワンクリックで見える。
- 曜日別の予約数: 月〜土のどこが多くてどこが少ないか
- 時間帯別の稼働率: 10時台〜21時台の各コマの埋まり具合
- トレーナー別の偏り: スタッフAは夜が埋まりやすく、スタッフBは昼が埋まりやすい
最後の「トレーナー別の偏り」は、予想外の発見だった。
うちのスタッフを見ていると、夜にセッションが集中するトレーナーと、昼間の方が埋まりやすいトレーナーがいた。これは顧客層の違い(主婦層 vs 仕事帰りのビジネスパーソン)によるもので、意図して分散したわけではなく、自然にそうなっていた。
この偏りを数字で見ることで、スタッフミーティングの議論が変わった。
「Aさんは夜の稼働率が80%だけど昼は40%。Bさんは逆に昼が70%で夜が50%。だったら、Aさんの昼の空き枠にBさんの夜に入りきれない顧客を誘導できないか?」
以前のミーティングでは、こういう具体的な数字ベースの話は出なかった。感覚で「なんか夜のほうが忙しいよね」で終わっていた。数字が出ると、「個人の主観だよね」で終わらなくなる。全員がその数字を達成するためにはどうすればいいかを考えるようになる。
次回予約の「誘導」で空き枠を埋める
稼働率の偏りが見えたら、次にやることは「空いている枠に予約を誘導する」ことだ。
といっても、やることは地味で当たり前のことしかない。
1. セッション終了時に次回予約を確定する
「次いつ来ますか?」ではなく、「次回は木曜の14時か金曜の11時が空いていますが、どちらが良いですか?」と空き枠を指定して提案する。
これをやるためには、トレーナーがセッション中にスマホで空き枠をパッと確認できる必要がある。紙の台帳やGoogleカレンダーだと、次の予約枠を探すのに時間がかかり、顧客を待たせてしまう。
FITBOOKERではトレーナーのスマホからリアルタイムで空き枠が見えるので、セッション後の1分で「ここが空いています」と提案できる。
2. 空き枠の多い曜日・時間帯を明示する
「火曜と水曜の日中は比較的予約が取りやすいです」と顧客に伝えるだけで、一定数の顧客がそこにシフトしてくれる。
特に、トレーニングの頻度を上げたい顧客に効果的だ。「週2にしたいけど、夜しか空いていないから無理」と思い込んでいる顧客に、「水曜の13時なら毎週空いています」と提案すると、週1が週2になることがある。頻度が上がればチケットの消化が早まり、次の回数券購入も早まる。
3. リマインド通知で「ついでに次回予約」を促す
FITBOOKERのLINEリマインド通知は、予約の前日に届く。このとき、通知の中に「次回予約がまだ入っていません」と表示される。
前日のリマインドを見たタイミングで「あ、次も予約しておこう」と思ってもらえれば、空き枠の見える予約画面から自分で枠を選んでくれる。トレーナーが個別に連絡する手間が省ける。
「数値管理に時間を取られる」問題の解き方
冒頭で書いた「数値管理をしたいが時間がない」問題の答えは、結局「自動化する」しかない。
手動で集計すれば半日かかるデータも、システムが予約データから自動で算出すれば、ダッシュボードを開くだけで見られる。
大事なのは、ただ数字を並べるのではなく「次に何をすればいいか」が分かる形で見せることだ。
ジムオーナーのほとんどはマーケターではない。「月間CVR」「セグメント別LTV」と言われても、具体的なアクションにつながらない。FITBOOKERの分析ダッシュボードでは、数字の裏にある「だからこうしましょう」を意識して設計した。
- 高リスク顧客が表示されたら → その顧客にLINEで連絡する
- 空き枠の多い曜日が分かったら → 次回予約でその曜日を提案する
- 回数券の消化ペースが遅い顧客が見えたら → 来店を促すフォローをする
この「見たら動ける」設計は、自分がジムを経営しながら「この数字を見てどうすればいいんだ?」と思った経験から作っている。
稼働率60%と70%の差は、想像以上に大きい
最後に数字の話をしておく。
先ほどの例で、週132枠のうち稼働率が60%(約79枠)だった場合と70%(約92枠)だった場合を比較する。
- 60%時の週売上: 79枠 × 6,500円 = 約51万円
- 70%時の週売上: 92枠 × 6,500円 = 約60万円
- 差額: 週あたり約9万円 → 月あたり約36万円
稼働率を10%上げるだけで、月売上が36万円変わる。
しかもこれは、新規集客を1人も増やさずに達成できる数字だ。既存顧客のセッション頻度を少し上げ、空いている曜日・時間帯に誘導するだけ。広告費ゼロ。
もちろん実際にはこんなにきれいにはいかない。でも方向性として、「新規を取る」よりも先に「今の枠の使い方を見直す」方が、コストもリスクも低い。
パーソナルジムの売上を上げたいと思ったとき、真っ先にInstagram広告やホットペッパーを検討するオーナーは多い。でも、まず自分のジムの稼働率が何%なのかを把握しているだろうか。
**稼働率を測っていないのに、集客に投資する。**これは穴の開いたバケツに水を注いでいるのと同じだ。
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