ジム経営ノウハウ2026-05-17·13分

HTML未経験のパーソナルジムオーナーが、予約管理に限界を感じて自分でSaaSを作った話

HTML未経験のパーソナルジムオーナーが、予約管理に限界を感じて自分でSaaSを作った話

「予約システムくらい、自分で作れないのか」

パーソナルジムを運営して4年目、ふとそう思ったのが始まりでした。

岡山でパーソナルジム「FIREFITNESS」を2店舗運営する岡田雄磨です。2021年の開業当初から予約管理には悩まされ続け、Googleカレンダー→外注システム(月額38,000円)と渡り歩いた末に、自分で予約SaaS「fitbooker」を開発するに至りました。

プログラミングの経験は「HTML・CSSを触った程度」。アプリを作ったことすらありませんでした。それでも約2ヶ月で動くプロダクトを完成させ、自分のジムに導入し、現在は他のジムへの展開を進めています。

この記事では、なぜジムオーナーが自分でシステムを作ることになったのか、どうやって2ヶ月で完成させたのか、そして導入後に何が変わったのかをお伝えします。

「現場の不満」がすべての起点だった

予約システムを自作しようと思った理由は、既存のどのシステムも「パーソナルジムの現場」にフィットしなかったからです。

Googleカレンダーで管理していた頃は、お客様からLINEで「この時間空いてますか?」と聞かれるたびにカレンダーを開いて確認し、返信する。この作業が1日5件、10件と増えていくと、セッションの合間に返信が追いつかなくなりました。

外注のシステムに切り替えても、月額38,000円を払いながら「結局LINEで個別連絡している」状態。機能は豊富でも、24時間ジムや子ども向け教室をカバーするための汎用設計で、パーソナルジムの現場で本当に欲しいものが足りない。

具体的に足りなかったのは3つです。

1. 来店間隔の変化から離脱リスクを検知する分析機能

会員がなんとなく来なくなっている。でも、いつから間隔が空いているのか、それが異常なのかを正確に判断できない。「最近あの人来てないな」という感覚だけでは、気づいたときにはもう遅い。

2. LINEでの自動フォローアップ

高リスク顧客を見つけても、毎日ダッシュボードを確認して手動で連絡する運用は続かない。忙しい日は確認自体を忘れ、その間に離脱が進行する。

3. SNSリンクからの集客効果を計測する仕組み

トレーナーごとにInstagramやThreadsのリンクを持っているが、そこから体験予約に至った人数を正確に計測できない。広告費をかけているわけではないから余計に、どの投稿が効果的なのかがわからない。

既存のシステムに不満を感じながらも、「でもシステム開発なんて自分にはできない」と思っていた時期が半年以上ありました。

HTML・CSSを触った程度から2ヶ月で完成するまで

プログラミング経験は「HTML・CSSを触った程度」が正直なところです。別のアプリを作った経験はゼロ。React、Next.js、Firebase、Stripeなど、使ったツールの名前すら開発前は知らないものもありました。

開発に充てた時間は、1日8〜10時間。ジムの営業は通常どおり続けながら、早朝と深夜に開発作業を行いました。朝5時に起きてセッション開始まで開発、営業が終わった21時以降にまた開発。この生活を約2ヶ月続けました。

一番苦労したのはデータベース設計です。

パーソナルジムの予約は、「会員」「トレーナー」「時間枠」「ブース」「回数券」が複雑に絡み合います。さらに、LINEのユーザーIDとシステム上の会員IDという2つのIDを一人の顧客に対して持つ必要がある。この紐付けの設計を間違えると、LINEログインの導線が崩壊します。

フロントエンド(画面)とバックエンド(サーバー側処理)の接続でもエラーの連続でした。値の受け渡しミス、ステータスの更新タイミングのズレ。動いたと思ったら別の画面が壊れている。その繰り返しをPDCAで回しながら、エラーを一個ずつ潰していきました。

「もう無理だ」と思った瞬間は、正直かなりたくさんありました。データベース設計をやり直す必要があると気づいたとき、LINEのID連携が一向にうまくいかないとき、テストで全画面が真っ白になったとき。

それでも続けられたのは、「これが完成すれば、多くのトレーナー、多くのパーソナルジムの役に立つ」という確信があったからです。自分自身が現場で4年間苦しんできた課題を解決するものを作っている。その実感が、毎朝5時に起きるモチベーションになっていました。

自分のジムに導入した瞬間の反応

開発を終えてFIREFITNESSに導入したとき、お客様から返ってきた声は明確でした。

「見やすくなった」「予約しやすくなった」

特にLINE連携の評価が高かった。予約確定時にLINEフレックスメッセージで届く通知は、デザインを作り込んでいるため視認性が高い。日にち、時間、場所、担当トレーナーがひと目でわかる。

前日のリマインド通知も効果てきめんでした。導入前は「日にちを1日間違えた」「時間を勘違いしていた」というケースが日に数回ありましたが、導入後はそれがゼロになりました。

ゼロです。

お客様の声をまとめると、「LINEを開くだけで次の予約が確認できる。カレンダーアプリや手帳を見返す必要がなくなった」という利便性が一番響いていました。

「1枠が無駄にならない」ことの経営インパクト

トレーナー視点で最も大きかったのは、予約の認識ズレによる「空き枠」が消滅したことです。

以前は、お客様が日にちや時間を間違えて来店しないケースが日に数回あった。その1枠は単純に売上ゼロになるだけではありません。

本来週1で通っていた会員のリズムが崩れる。次の予約が来週、再来週に延びる。来店間隔が空くと結果が出づらくなる。結果が出ないとモチベーションが下がる。モチベーションが下がると離脱する。

たった1回の予約ミスが、LTV(顧客生涯価値)の減少という連鎖を引き起こす。

この構造に気づいてからは、「予約ミスを防ぐ」ことの価値を単なる時間削減ではなく、LTV維持の観点で捉えるようになりました。リマインド通知1本で防げる損害は、1セッション分の売上6,000〜8,000円ではなく、その会員が半年間続けてくれた場合の数万円単位の話なのです。

テスト導入店舗を経てわかったこと

fitbookerは自分のジムでの運用に加えて、知り合いのジムオーナーにテスト導入を依頼しました。

1店舗目のテスト導入先は、ちょうど独立して新店舗を立ち上げるタイミングだったオーナー。前の予約システムからの引き継ぎがなく、ゼロから入れられる条件だったので声をかけました。無料で提供する代わりに、使用感のフィードバックとエラー報告をもらうという取り決めです。

テスト導入で出てきたフィードバックは、使いにくさよりも表示のバグやボーディングの不具合が中心。UIの設計自体は「見やすい」「面倒な設定がない」と評価してもらえました。

この経験で確信したのは、パーソナルジムのオーナーやトレーナーにとって「初見で迷わないこと」がシステム定着の最低条件だということ。フィットネス業界のSaaS解約理由の1位は「使いこなせない」(55.9%)というデータがあります。マニュアルを読まないと設定できないシステムは、どんなに機能が優れていても現場では生き残れません。

既存システムからの移行は想像より簡単だった

テスト導入時に気づいた意外な事実があります。移行作業は思ったほど大変ではありませんでした。

既存の予約システムから出力したCSVデータ(メールアドレス、名前など)をもとに、会員情報の紐付けをある程度自動化できたからです。完全に手動でゼロから入力し直す必要はなく、既存データをベースに移行できる設計にしておいたことが功を奏しました。

これは開発段階で意識して作った部分です。どんなに優れたシステムでも、「乗り換えが面倒」というだけで導入が止まる。特にパーソナルジムは少人数運営なので、移行作業に何日もかけている余裕はありません。

分析ダッシュボードがミーティングを変えた

fitbookerを開発するなかで最も力を入れたのが分析機能です。これは大手のシステムにはない、パーソナルジム特化のダッシュボードです。

具体的には、来店間隔データから高リスク顧客を自動検知する離脱予測、トレーナーごとのリピート率やキャンセル率、SNSリンクからの体験予約数の計測、売上予測などが一画面に集約されています。

この分析機能が、スタッフミーティングの質を根本的に変えました。

以前のミーティングは、代表の私からの一方通行。「最近○○さん来てないから連絡して」「キャンセル多い気がするから気をつけて」。感覚ベースの指示でした。

ダッシュボードが使えるようになってからは、データを見ながら双方向の議論ができるようになりました。「このトレーナーはリピート率が高い。何が強みなのか」「このトレーナーはキャンセル率が他より高い。何が起きているのか」。数字があることで、スタッフ自身が自分の強みと弱みに気づき、改善のアクションを自発的に考えるようになったのです。

なんとなくの感覚では正しい数字が測れない。データがあることで初めて、ミーティングが「報告の場」から「改善策を議論する場」に変わりました。

離脱予測で実際に救えたケース

分析機能のなかで最も実戦的な効果を発揮しているのが、離脱予測です。

通常の来店頻度から2週間以上、あるいは3週間以上空いた顧客を「中リスク」「高リスク」として表示し、連絡を促す機能。この表示を見てすぐに声をかけることで、実際に離脱を防げたケースが複数あります。

パターンは大きく2つに分かれます。

パターン1:結果が出なくなってモチベーションが下がっているケース

こちらからコーチングやカウンセリングをLINEまたは対面で簡単に行い、モチベーションの再上昇を促す。「最近どうですか?」の一言から始まるコミュニケーションで、「実は体重が停滞して…」という本音が出てくる。そこからトレーニング内容や食事の見直しを一緒に考えることで、継続に繋がります。

パターン2:仕事や生活が忙しくなって足が遠のいているケース

回数券の期限を延長したり、来店頻度を週1から隔週に調整したり。「全部やめる」以外の選択肢を一緒に探ることで、完全離脱を防ぐ。

いずれのケースも、声をかけるタイミングが早いほど効果が高い。2週間空いた段階で連絡するのと、1ヶ月空いてから連絡するのとでは、復帰率がまったく違います。システムが自動で検知してくれるからこそ、忙しい日々のなかでもタイミングを逃さず対応できるのです。

「現場のトレーナーが作った」ことの意味

fitbookerを広めていくなかで、一番伝えたいのは「現場のトレーナーが作ったシステム」だということです。

大手と同等、あるいはそれ以上の機能を、約3分の1の価格で使えるのはもちろんですが、それ以上に重要なのは設計思想です。

SaaSベンダーが作るシステムは、ヒアリングをもとに設計されます。でも、ヒアリングで聞ける課題と、実際に毎日8時間セッションをこなしながら管理画面を触る人間が感じる「手の届かない痒いところ」は、まったく別のものです。

たとえば、セッション間の3分休憩でスマホから次の予約を確認したい。予約変更のLINE通知は、テキストだけだと見落とすからビジュアルで届いてほしい。回数券の残り2枚の通知は、会員に「そろそろ買い足そう」と思わせるタイミングで届かないと意味がない。

こうした「使う側の感覚」は、現場を知っているから設計に落とし込めたものです。

まとめ:困っている人がいちばん良いプロダクトを作れる

HTML未経験からの開発、早朝5時起きの並行生活、何度も「もう無理だ」と思った瞬間。正直、効率的なプロセスとは言えません。

でも、4年間ジム経営の現場で積み重ねてきた「ここが不便」「これが欲しい」という実体験は、どんなに優秀なエンジニアチームのヒアリングでも得られない設計の根拠になりました。

パーソナルジムの予約管理に課題を感じている方は、ぜひ一度fitbookerを触ってみてください。月額9,800円、初月無料。「現場のトレーナーが自分のために作ったシステム」を体感していただけるはずです。

fitbooker 公式サイト →

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